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1. ダイヤの価格


人は、自分の職業におうじて、ものの価値を判別しようとするものだ。それを学ばせるため、あるとき、師が弟子に言った。
「このダイヤをバザールに持っていって、値段をつけさせてみなさい。でも,売ってはいけない」
弟子は、最初に、野菜市場でナスを売る男のところにダイヤを持っていった。 なす売りは、ダイヤを手の上でころがしながら言った。
「子供のおもちゃによさそうだ。ナス9個と取り換えよう」
「友よ」と弟子が言った。「もう少し。ナス10個でどうだろう?」
ナス売りは言った。 「いや、これ以上はだめだよ。もう市場の値段より高く出した。それでよかったら買ってあげよう」
弟子は笑ってそこを去った。 師のもとに戻って、彼は言った。
「ナス売りの男は、ナス9個の値段しかつけませんでした。それ以上は1個もやれない、子供のおもちゃには高すぎるくらいだ、と言いましたよ」
師はにこにこ笑って、言った。
「彼はナス売りにすぎない。こんどは布地商のに持っていきなさい。ナス売りより少し大きな金を扱っているから、どれくらい値段をつけるだろうかね?」
弟子はダイヤを持って、布地商人の店をたずねた。
「これを売りたいが、いくらで買いますか?」
ダイヤを確かめながら、商人が言った。
「いい石だ。これを使って高価な衣装をつくれそうだから、900ルピ−払おう」
「友よ」と弟子が言った。「もう少し出せないかね。1000ルピ−なら考えてもいいが・・・」
布地商は手をふりながら、言った。
「これ以上は無理だね」
弟子は師のもとへ戻って、それを報告した。 話を聞いたあと、師が言った。
「それじゃ、こんどは宝石商のところへ持っていきなさい」
弟子は、宝石商のところへダイヤを持っていった。 宝石商は、ダイヤを一目見るなり即座に言った。
「10万ルピ−で売ってくれないかね――?」


【コメンタリー】
この物語りは、ふたつのことについて語っている。
ひとつは、「あなたにとって、もっとも大切なものとはなんだろうか?」ということ。そして、もうひとつは、「あなたは、それにどれほどの価値を見いだしているだろうか?」ということだ。
多くの人はささいなことに気をとられて、もっとも大切なことを忘れているようだ。小さな欲にまぎれて本当に価値のある宝を見失っている。
人生におけるダイヤモンドとはなにか――?
問題は、ほとんどの人がそれを自覚していないということだ。そんなことは考えたことすらない、という人がほとんどかもしれない。
最初に、何がダイヤモンドかを知らなければならない。 そして、次に、それを探さなければならない、と物語りは言う。
ダイヤモンドは、あらゆる石のなかでもっとも高価な石だ。しかし、それを識別できるのは、ほんの少数の人たちにすぎない。そして、そのような人たちだけが、存在の真の祭りを祝うことができる。 それを見る目がなければ、ダイヤはただの石ころにすぎない。 それを知らなければ、あなたはナス10個でそれを売ってしまうかもしれない。 せいぜいのところ、布地商に1000ルピ−で売って、満足しているかもしれない。
実際のところ、これはダイヤモンドの話ではない。
これは、ほんとうはあなた自身の話だ。 あなたの魂の話なのだ。
ほとんどの人は、貴重な自己をがらくた商人に安売りしている。 それをつづけているうちは、ほんとうの満足は得られない。
アヒルの社会に生きているうちは、白鳥に真の飛翔はおとずれないだろう。
そして大空を自由に飛ぶことを知らない白鳥を、真の白鳥と言えるだろうか? 
その白鳥は、自分をみにくいアヒルの子だと思ってしまうのがおちだ。
だから、あなたはダイヤを識別できる目を養わなければならない。 あらゆる石から、ダイヤをよりわける方法を学ばなければならない。 それがわかれば、ダイヤを野菜市場に持っていくことはありえない。 あなたの魂をキャベツや人参と交換することはありえない。 ダイヤは、宝石商のところに持っていかなければならないのだ。

インドのゴルゴンダ地方はダイヤモンドの産地だった。そして、ここで世界最大級のダイヤの原石が発見された。 コヒノ−ルという名前がつけられたこのダイヤは、現在は英国の王室が保持しているという。
この原石が発見されたときの話がたいへんおもしろいので紹介してみよう。

ゴルゴンダ地方に、ひとりの百姓が家族と一緒に暮らしていた。
あるとき、巡礼のサドウー――放浪僧――が彼の家で一夜を過ごした。
百姓はサドウーに生活がいかに苦しいか、語った。それを聞いて、サドウーが言った。
「国中の人たちが、ここにダイヤを探しにやってくるのだ。おまえもダイヤを探してみたらどうかね?」
サドウーの言葉に触発されて、彼は一大決心をした。そして3年という期間をきって、ダイヤを探しにいくことにした。 彼は一生懸命ダイヤを探しつづけた。だが、ダイヤは見つからなかった。
三年後、彼は傷心の思いで家に帰った。
妻や子供たちは彼の帰りを喜んだ。が、彼は疲れ果て、がっかりしていた。
夕食のあと、彼は、子供たちが土間で遊んでいる石を見て、飛び上がるほど驚いた。その石は、見たことも聞いたこともないほど大きなダイヤの原石だったからだ。
それは以前畑を耕しているときに見つけたものだった。きらきら光ってきれいな石だと思って、子供たちのおもちゃとして与えたのだ。
3年前はダイヤだとはわからなかった。 だが、今ははっきりとわかる。
3年間ダイヤを探すうちに、ダイヤを識別できるようになっていたからだ。 そして、ダイヤは彼の家のなかに最初からころがっていた。

この話がほんとうにあった話なのかどうかはわからない。実話にしては、ちょっとできすぎというかんじがしないでもない。
しかし、ダイヤの原石があなたの家のなかにあるというのは真実だ。
あなたのなかのダイヤを見つける方法を学び、その価値を知る宝石商のところに持っていかなければならない。
さもなければ、あなたの人生には真の評価が得られず、真の満足は得られないだろう。
 
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